アラート
喜びの舞
ある日の昼下がり、いつものようにレジを打っていたところ、ユーリ先輩(仮名)が踊りながら事務所から飛び出してきた。私の販売コンクール入賞を喜びすぎて、職場にいることも営業時間内であることも、頭の中から消え去ってしまったらしい。
彼女は店内の通路で踊ったままお客様と遭遇していたが、お客様は見なかったことにしてくださった。なんとも不思議な光景であった。
人見知りの奮闘
初めての販売コンクールが始まって数日後、新たに私の店舗の担当マネージャーになった方から、電話がかかってきた。
「のさんですか?初めまして。コンクール頑張ってると聞いたけど、どうですか?」
「できる限りの努力はしています。現在の売上げ本数は○○で、最終的には△△くらいになると思います」
「…すっげぇー!数字もすごいけどさぁ、の~ちゃんて、すごいやる気あるよね!それでさぁ、上位入賞すると、全店舗に結果が書面で通知されるんだ」
「はぁ、そうなんですか。載れるかどうかはわかりませんが、全力で」
「載って(はぁと)」
「あの自信はないですが、全力を尽くします」
「やっぱり良い子だねぇ。話には聞いていたんだけど。うん、じゃあ載ってね。今後ともよろしくねっ!近いうちに会いに行くから!」
物凄い勢いのあるマネージャーだった。実際にお会いしたら、どんな感じなのかなぁとぼんやり思った。
結局、人見知りを棚上げされた私は、コンクールで入賞した。
人見知りの行方
ある日、ユーリ先輩(仮名)がやってきて、おもむろに社内販売コンクールの話を始めた。
「人見知りには辛いイベントなのですが、この会社にいる以上、やはり全力を尽くさねばなりません」
そこで、私は「私も人見知りなので、あまりその手のイベントは得意ではないのですが・・・」と言ってみた。
「それは置いといて」
「いえ、元に戻して」
「では、間をとって、そこの棚に上げておきましょう」
そんなやりとりの挙げ句、私の「人見知り」は某ドラッグストアの棚上の在庫になった。それ以来、私の「人見知り」を見た者は存在しない。
人見知りの定義
ユーリ先輩(仮名)は「私って人見知りなんですよ~。ところで、の~さんは、髪を伸ばしているんですか?私みたくお団子頭にしたいですか?」と異動初日に言った。「人見知り」という言葉の定義は人によって大きく異なるのだな、と思った。