そして2ヶ月後
ユーリさん(仮名)という一見おだやかな女性が他店舗から異動してきた。仕事熱心で、上司からも先輩からもほったらかしにされていた私の面倒もよくみてくれる人だ。現在も何かと心配してくれて、異動先の私の元には各種資料を送ってくださっている。*1
そんな先輩と二人でレジに立っていた日の正午過ぎ、ユーリさんは来店されたお客様に挨拶をした。
「いらっしゃいませ、こんばんは」
ひき続き、私も挨拶することにした。
「いらっしゃいませ、こ、こ、こんにち・・・は」
ふと横を見ると、ユーリさんは笑いを堪えていた。
「すみません、復唱できませんでした」
「ごめんなさい、ちょっと辛いできごとがあって、帰りたくなってました」
「せんぱーい、置いていかないでー。私も日没後の世界へ連れてってー」
ユーリさんは、声を出さず、しゃがみ込んで笑っていた。
*1:私の元に資料が届かない理由はまた後日書く
元気にご挨拶
私の配属された店舗は不採算店舗と呼ばれていたらしく、だいたい17時を過ぎると店員が二人しか居ないという悲惨な状態だった。しかも、一人は無資格者な上に薬にも接客にも関心が無いという、何故薬屋で働こうと思ったのか謎な人物だった。
そうなると、お客様に不快な思いをさせないためには、私一人ががんばるしかない。そんな悲壮感を胸に秘め、挨拶だけでも元気よくすることを心がけていた。
その結果、私の口から発した言葉が「いらっしゃいませ、こんばんにゃ!」だったことは本当に残念としかいいようがない。
店内に20人ほどいらっしゃったお客様が、ドリフや吉本新喜劇のようにずっこけるリアクションを取ってくれたのが、唯一の救いだった
はじまり
そもそも、洗剤だろうがのど飴だろうが、お客様の抱えている問題解決の手助けができればと思い、ドラッグストアに就職したのは2011年3月のことだった。
・何も不調や不都合を解決するのは薬とは限らない
・解決に至らずとも、解決につながりそうな何かを継続的に提案する
・もちろん、お客様には親切丁寧な接客を心がける
そんなことを考えて乗り込んでいった訳だが、社内に敵も味方も作りまくり、壊れてしまった私は、1週間のお休みをもらった。本当は6月いっぱい休むつもりだったのだが、だいぶ値切られてしまった。
時間もできたことだし、2年前にさかのぼって、少しずつ、薬屋ネタを書いていこうと思う。